50歳から海外でフリーランスとして生きる

ネパールで仕事をするなら、カーストや宗教の問題は、他人事ではないのである

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ネパールのポカラ在住、時々日本やタイ、その他いろんな国に出没する、エディター兼ライター兼コーディネイターのみやちか(Chikako Miyamoto)です。今まで培った編集力を駆使して、50歳からのトキメキのある人生を発信し続けるお姉さん。

 

こんにちは〜、ネパールで仕事を始めて約20年のみやちかです。

 

海外で仕事をする時には、日本では考えたこともないような問題にぶつかることもあります。

 

ネパールにおいてそれは、カースト(ネパールではジャートとよぶ方が多いです)や宗教の問題でした。

 

そういうものが希薄な日本の社会からきた私には、いろんなことが濃厚すぎました。文化や習慣、宗教が関わっていますから、一筋縄ではいかない問題だし、どこまで譲歩するのか、その線引きや対処に正解はありません。

 

それでも、海外で仕事をする以上、雇用者や仕事の発注者として、あるいは仕事のパートナーとして、文化、宗教、風習の違いにどのように対処するのか、その姿勢は常に問われます。

 

日々、葛藤。

 

外国で仕事をするようになって、いろんなことを考える機会だけは格段と増えたと断言できる私です。

 

 

『私は、掃除をするカーストではありません』

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昔、私がまだ宿を経営していた頃、営業所の事務員として、最高カーストであるバウン(ヒンズー教の司祭カーストです)族の女性をアルバイトで雇ったことがあります。

 

最高カーストとは言え、大学生のアルバイトです。たいしてできることもなく、コンピュータ入力やコピー取り、電話の受け答えなどが主な仕事。

 

で、日本的感覚でお茶汲みと朝の事務所の掃除を頼んだら、きっぱり拒否!

 

「私は、お茶汲みや掃除をするカーストではありません」ときたもんだ。

 

何様!

 

日本的感覚で、カチンときた私ですが、聞けば、ネパールの会社、お掃除おばさんや、賄いおばさんは別に雇うのが普通だとか。

 

はあ〜〜〜〜〜〜!? なんなの、この非効率的、不経済的な社会は!

 

娘の教科書には、ネパールには主に36のジャートがあるが、それらに上下はないと謳っているじゃないか。それはまだまだ本の中だけの話なのか。

 

たかだか、3人しかいない営業所のために、アルバイトを雇っている上に、掃除おばさんや賄いおばさんが雇えますか!

 

頭にきて、私が意固地になって自分で皿洗いをしていたら、結局は、別のジャートのスタッフ(ローカーストでもハイカーストでもない子でした)が、自分がやるからと言ってくれましたが、バウンの女の子は、それが当然のような顔をしていて、その神経も日本人の私には理解しかねました。

 

今なら、雇う前に最初にそのあたりのことは、絶対に確認します。

 

うちは、どんなジャートでもテーブル拭いたり、お客様の荷物を運んだりがありますよ。それができないなら他の職場を当たってくださいと。

 

その方がお互いにストレスになりませんもんね。

 

 

『私はアリを殺すことができません』

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それから、スタッフに、はっとさせられたこともありましたね。

 

あれは、ロビーのソファにアリがたくさんたかっていた時のこと。お客様がお菓子をそこで食べられたのか、そのお菓子の粉にたくさんのアリが寄ってきて、ソファがアリだらけになってしまっていました。

 

私は、何気に新しく入ったウエイターの子に、「ソファにアリがたくさん来ているからきれいにして」と言ったのです。

 

その返事がこれ。

 

『私はアリを殺すことができません』

 

あ〜、彼は、チベット仏教徒なのでした。

 

そうなんです。チベット仏教では殺生はご法度。虫であろうと、蚊であろうと、アリであろうとダメなんです。信心深いスタッフに、無理やりアリを殺させることはできず、他のスタッフにやってもらいました。

 

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でもね、ちょっと複雑な気持ちでした。

 

私は、アリを平然と殺せちゃう人間なんだなあ、なんてふっと思ったりして。

 

アリの命に比べたら、人様がソファーに座れないことくらい、なんでもないんじゃないかなんて思ったりもして。

 

いやいや、ロビーのソファーがアリだらけの宿なんて有りえないでしょと思い直したりして。

 

時々は、何か正しいのか、わからくなっちゃったりします。まあ、絶対に正しいなんて物事自体存在しないっちゃ、しないんですけどね。

 

でも、今でも、時々、彼の困惑した顔を思い出すことがあるのです。

 

 

ジャート間の深くて暗い溝は存在する

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しかし、所詮外国人である私にとって、個々のスッタフと接すること以上に難しかったのは、ジャートの違うスタッフの間に横たわる、深い溝の存在に対処することでした。

 

日本人でも言うじゃないですか。

 

東京の人はスカしてるとか、大阪人はずうずうしいとか、京都人はプライドが高いとか。

 

ネパール人も、ネパール人同士お互いに、よくそういうことを言います。

 

バウンは、『ケチで臆病者』、という風に他の民族、ジャートから言われているみたいです。

 

モンゴル系のタマン族は『ラト』だと言われることが多いようですね。ここでいうラトを日本語を訳すと何が適切でしょうか? のろまで間抜けでぼーっとしてるって感じが近いですかね? (日本語で言っちゃうとひどい言われ方ですよね)

 

あと、カトマンズに多いネワール族は、他の民族からは、『ネワール族は友達になり得ない』と信用されていないようです。同族間の結束はすごく強いネワール。ただ、その分、排他的なところもあるからのようです。

 

イギリス軍で働くネパール人の中で一番多い民族であろうと思われるグルン族、こちらもモンゴル系の民族ですが、グルンを装飾する言葉は、『忠誠心の高さ』らしいです。さすが、イギリス軍で働くだけのことはありますよね。

 

いや、これ、私の意見ではありませんよ。あくまでも、ネパール人のネパール人に対する一般的意見。

 

多民族国家で文化、言葉、習慣、宗教の違う民族が一緒に暮らしているネパールです。日本以上に国民間の軋轢は深い(らしい)のです。

 

それを知らずに外国人が、いろんな民族のスタッフをごちゃまぜに雇ったりすると、管理職の人にとってめちゃくちゃ、やりにくい状況を作ったりしちゃいます。

 

ネワール族が4人の厨房に、モンゴル系のスタッフを一人ポンといれちゃったりとかね。

 

そりゃね、仕事場ですから、民族やジャートに関係なく自分の義務は遂行すべきで、それをジャートがどうのこうのいうスタッフのレベルが低いっちゃ、低いんです。

 

でも、それが、現実。

 

何も、もめやすい環境をわざわざ作ることはないと思うんですよね。

 

しかし、空気を読むのが得意な日本人だとて、ネパールの風習、民族、人々の意識を知らずして、この微妙な溝を理解するのは難しいのです。

 

若い世代には、だんだんジャートを気にする人は減ってきてはいるのですが、それでも、見えない溝は存在しています。

 

 

あ〜、めんどくさ。とつい思っちゃうこともありますが。

 

でも、そういう日本じゃ体験できない日々の葛藤が、きっと私を成長させてくれているのだと、信じて(アタックナンバーワン風に、ここはおめめキラキラで!) 頑張るしかないのです!

 

 

 

 

 

 

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