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姪っ子の結婚式に想う、ネパールの結婚事情

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ネパールのポカラ在住、時々日本やタイ、その他いろんな国に出没する、エディター兼ライター兼コーディネイターのみやちか(Chikako Miyamoto)です。今まで培った編集力を駆使して、50歳からのトキメキのある人生を発信し続けるお姉さん。

29歳、シドニー在住、ネパール人としては完全行き遅れの我が家の姪っ子、ジュナ(ツレアイ方の姪っ子です)から、

「結婚したいと思っている人がいるんだけど、アンティ、どう思う?」

というメッセージを受け取ったのは、今年の2月のことでした。

それがインターカーストの相手だったため、ネパールの結婚事情について、改めて、いろいろ考えさせられたのでありました。

 

ネパールには民族、階級を区分けする カースト制度が存在する

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インターカーストとはどういう意味か、ネパールの結婚事情をお話しする前に、まずは、ネパールのカースト制度について話さないと、話しが見えてこないと思います。

ネパールは多民族国家の国です。言葉、文化、食事、宗教が違うたくさんの民族の集まりです。中国も多民族国家ですが、中国は圧倒的多数の漢民族がいて、その他たくさんの少数民族という感じですが、ネパールの場合、特に圧倒的多数の民族がなく、たくさんの民族が同居している感じ。さらに、民族の中でも、主に職業によって様々な階級に分かれています。

これらの民族、階級によって人を区別する制度がカースト制度ですが、支配層の人々は、このカーストに上下をつけることで、人民支配を行ってきた歴史があります。現行の法律上では、一応、人の身分、階級に上下はないということになっていますが、実際には、まだまだカーストによる差別や、民族間の隔離の問題はあります。

特に結婚となると、今もまだ同居が基本のネパール、宗教や、言葉、文化、食生活が違う嫁がこられても困るというので、現在においても、結婚は同カースト同士が好まれます。ゆえに未だに見合い結婚が主流。

しかし、最近は、カーストを超えて結婚するカップルも徐々に増えてきていまして、そういう結婚をインターカースト結婚というのです。

 

モンゴル系の姪っ子ジュナとアーリアの血も混じった婿候補殿

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と、小難しい話はこれくらいにして、うちの姪っ子・ジュナの場合のお話しに戻しましょう。

ネパールには民族的には、大きく分けて、アーリア系と、モンゴル系の二つの系統が多いのですが、うちのツレアイはモンゴル系の中のマガール族。なので、うちの姪っ子も当然マガール。

似ている民族にグルン族と呼ばれる民族がありますが、グルンが忠誠心高く、結束も固く、勇敢なイメージで通っているのに比べると、マガールは今一つパッとしないモンゴル系の田舎者っていうイメージなのは否ません。残念ながら…。

しかもジュナっち、もう29歳、後がありません。ネパールじゃあ、女の子は25歳までには嫁に行かせろ的な空気が未だにありますし、村では、21、22歳くらいでとっとと嫁いでしまいます。もう完全な行き遅れ状態です。

一方、ジュナの結婚相手の候補は、スニルくんという大学生で、年令もジュナより3歳年下。男性としては、結婚するにはちょうどいい年頃です。

見かけはモンゴル系なんだけど、モンゴルの血だけでなく、アーリアの血も入っていると言われているネワール人。そう、カトマンズ盆地に古くから王宮文化を築き上げてきたネパール国内一の教養と文化を誇るプライド高い民族です。日本でいうと京都人っぽいところがあって、ネワール内の結束は固いのですが、他の民族に心を許さないところがあります。

そんなわけで、ジュナの結婚相手の候補がネワール人と知ったジュナママは当初、この結婚には反対でした。ネワールの家に嫁ぐなんてとんでもない的な…。何しろ、他の民族に対して超閉鎖的なネワール人ですから。しかも学生、年下ときたもんだ。

ただ、ジュナパパは意外と冷静な対処で、この話を逃したら、ジュナの年令に見合う年令でろくな男はいないだろうと考えたらしいのです。娘がこの男性でいいというなら、それでいいではないかと。結婚しないよりは、インターカーストでも結婚してくれた方がいい、それに、どうせ、オーストラリアに住むのだろうから、と。それがジュナパパの判断でした。

 

インターカーストマリッジの昔と今

 

で、この話には後日談がついていました。

実はスニルくん、純粋なネワールではありませんでした。スニルくんのお母さん、実はマガールだったのです。ネワール人のお父さんとマガール族のお母さんを持つハーフです。なるほど、どうりでスニルくんの顔、モンゴル系っぽいはずです。

それを聞いたジュナママ、急に態度を軟化させました。婿殿のお母さんがマガールだったら娘をいびったりしないだろうと。

それにしても、婿殿の親もインターカーストマリッジだったとは、驚きです。その当時は、今以上に風当たりはきつかったことと思います。

 

これはうちのスタッフの話なんですが、ほんの18年前のことです。

 

うちのスタッフのネワール族の男性がある日突然牢屋に入れられてしまったことがありました。驚いて理由を聞くと「弟が駆け落ちしたからだ」というのです。弟が駆け落ちすると何故兄が逮捕されるのか、詳しい説明を聞いてやっと納得できました。

彼の弟くんには大学時代からつきあっている彼女がいました。いい子でしたが、グルン族でした。両家の親ともにこの結婚には反対でした。無理やり別れさせようとしたものだから、この二人強硬手段に出ました。駆け落ちです。

怒った女の子の親(実は警察関係者でした)は、弟くんを娘を誘拐した犯人として訴えました。でもって、全然関係ない、彼の兄が、誘拐の片棒を担いだということ捕まってしまったというわけです。なにしろ当の本人たちは駆け落ちして行方が分からずの状態です。弟くんが娘を返すまで、「お前も牢からださんぞ」的な強硬な態度でした。

結局2ヶ月後二人が戻ってきて、お兄さんはやっと釈放、二人も駆け落ちまでしたからには、親も認めざるを得ません。駆け落ちした娘を他の男性が好んで結婚することはネパールではあり得ません。お手つき女はいらないという風潮はまだまだありますから。

そんなわけでは二人は夫婦として暮らし始めました。両親ともしぶしぶという感じです。ただ、現在でも弟くんの家の台所に、彼女は入れてもらえません。カーストが違うからです。結局二人は同居せずに、別居して生活しています。

 

うちのスタッフの話は、極端な例かもしれません。でも、それくらいインターカースト結婚というのは、まだまだ大変であるということです。

 

変わりつつある、これからのネパールの結婚事情

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同居が基本となる場合は、どうしても宗教や話す言語、食生活が同じである同カースト同士の結婚が望まれるものです。そうでないと、日常生活に支障をきたすからです。

でも、街では徐々に核家族化も進んでいます。また、うちの姪っ子のジュナのように、海外で就職して、海外で結婚して、海外に永住というパターンも急速に増えつつあります。

現在30代以下の人々は、ネパールが教育に力を入れ始めた後の世代でもあります。学校の社会の教科書には、ネパールは多民族国家であり、多くの民族や職業の人で構成されているが、それらは皆平等に扱われなければならないと、明記してあります。

建前と本音は違うのかもしれません。でも、建前だけでも、みんな平等だよと言い続けることは、きっとネパールを少しずつながら変えていくように思われます。

これからも、パソコンやスマホを使いこなし、インターナショナルな情報にも通じ、どんどん海外ん進出していく若いネパール人が増えていくことでしょう。そして、インターカーストという言葉自体がなくなる日がいつか来るのかもしれません。

 

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