紙媒体ライターだった私が戸惑った、ウェブライティングにおける書き方の違い
こんにちは、ネパール在住、フリーランスライターのみやちかです。
さてさて、私は、昔、昔、もう20年以上も昔、紙媒体の編集とライターを7年間やってました。
当時ウェブという媒体がなかったので、ライターといえば、紙媒体が普通の時代。
そんな私が、20年のブランクを経て、ウェブライターをして仕事をし始めたのが、昨年の夏のこと。
いや〜、正直、戸惑いました。紙媒体とウェブでの記事の書き方の違いに。
今日は、そんな私の体験から、紙媒体での原稿の書き方と、ウェブでの書き方の違いについてのお話をしようと思います。
この記事のもくじ
紙媒体ライター時代に、私が原稿を書くために気をつけていたこと
さて、そもそも紙媒体ライターとは何かというと、簡単にいうと新聞、雑誌など紙に印刷されるものに記事を書く人のこと。
私の場合は、いわゆる業界紙(きもの業界向けでした)や社内報(某大手全国チェーンの小売店)、会社案内、お店の人がお客様に配る情報誌(和関係)などの編集、ライターをしていました。
きものや和関係の仕事が8割以上で、日本の文化やきものについて書籍で(当時はググる環境ではなかったですから)調べて書くこともありましたが、半分以上は、取材記事でした。社長インタビューや、販売員さんやお店の紹介記事、新商品の案内記事などです。
記事を書く時は、掲載紙のコンセプトに沿って、掲載紙の読者ターゲットを考えながら、掲載号の特集テーマを、読者に興味をもってもらえるように書きます。
そして、それ以外にも、紙媒体ならではの注意事項がありました。
締め切り厳守
業界紙や社内報は、定期発行されていましたから、当然、きっちりと締め切りが決まっています。
発行日が決まっている印刷物の場合、締め切りは本当に厳しく、1日の遅れも許されません。
紙媒体、特に定期刊行物のライターの場合は、締め切り厳守は仕事人としての大前提となります。
文字数と改行部分
紙媒体の場合、文字数と、文字の改行まで考えて記事を書かねばなりません。
というのも、雑誌というのは、印刷の関係上、編集の段階で、全ページ数が決まっています。原稿が長くなっちゃったから、1ページ増やしてね、なんてことはできません。
一行何文字で何行のコラムが何段あるかまで決まっていて、割り当てられたページのレイアウトを見ながら、決められた文字数で書かねばなりません。
一行20字で30行が一段で、それが右ページに2段、左ページに3段、見開きで全部で5段分文章が必要と言われれば、それにきっちり当てはまるように、原稿を書くのです。
しかも、文章を書く場合は、行頭が『す。』とか『。』だけで終わらないように、改行箇所に気をつける必要もありました。
いや、これ、本当に職人芸なんです。
校正は、初校、再校、再々校まで
あとから、修正できるウェブと違って、紙媒体は、印刷物ですから、間違いは許されません。致命的な間違い(人名を間違える、日時を間違える、電話番号や、住所を間違える、値段を間違えるなど)をした場合は、最悪、刷り直しになることだってあるんです。
だから、校正には時間をかけます。初校、再校、再々校まで、人を替えて行うのが普通です。
この部分が一番神経を使う作業でした。
紙媒体とはまるっきり違う、ウェブライターに求められる原稿
テーマに沿って、読者の役に立つことを、興味をもって読んでもらえる記事にするのは、紙媒体でも、ウェブでも同じです。
でも、実際に原稿を書き進める上での注意点は、紙媒体とウェブでは全然違っていました。
紙媒体では重要だったけど、ウェブではそうでもないこと
まず、締め切り。ウェブのお仕事では、紙媒体ほどのタイトさを感じません。締め切りは一応あるけど、要相談みたいな案件が多いような気がします。
文字数に至っては、3000字〜5000字など、あまりにもざっくりとした指示で、驚きです。ウェブ上だと、紙のようなスペースの制限はありませんから当然なんですけどね。
それから、文字の間違いについて。もちろん、プロなら、文字の間違いがないにこしたことはありません。ただ、あとからでも直せるということが、校正が徹底されないままに掲載されることにつながっているように思います。
そんなわけで、紙媒体では重要視された「締め切り」「文字数の制限」「改行箇所」「校正」は、ウェブライティングの案件ではそんなに重要視されていません。
ウェブライティングで重要なポイント1 キーワード
ウエブライティングで最も重要なのは、SEO対策です。
何よりもまず、膨大なウェブ上の情報の中から見つけてもらえることが重要です。検索して見つけてもらえること。さらに言えば、読みたいと思ってそのページを開いてもらえること。
そのためのキーワード指定であり、タイトル、見出しです。
このようなキーワードありきの、ライティングを紙媒体ではしたことがありませんでした。だから、ウェブライティングをはじめたときに、キーワード重視のライティングにすごく戸惑いました。
例えばですよ、「便秘 妊婦 原因」というキーワードが指定されていて、それを使ってタイトルをつけてくださいという指示がきます。しかも30字以内で、できるだけ、タイトルの前半にキーワードを入れろという補足指示つきです。それに、上記のキーワードで検索するとすでにたくさんのタイトルがあり、それと違うタイトルにしなくてはいけません。
日本語的な美しさとか、リズム感を崩してでも、まずキーワード。ウェブライティングのタイトルと見出し決めのポイントはまずそれにつきます。
さらに、クリックして読んでもらうためには、少々の煽りも必要です。業界紙や社内報という固めで地味な文章を書くことがほとんどだった私には、かなり苦手な部分です。
煽るって、何?って感じでした。
でも、開いてもらってなんぼなんですよね。ウェブの記事というのは。
さらに、かなり細いチェックの入るライティング案件の場合は、本文中に指定された関連語彙を50字以上いれるというような指示も付け加えられます。
指定されたテーマをいかにわかりやすく説明するかを考えるだけでなく、指定されたキーワードをいかにいれこむかということを考慮した内容構成が求められるのです。
ウェブライティングで重要なポイント2 結論が見えること
その内容構成ですが、紙媒体の場合、基本的な内容構成は、『起承転結』です。例外もありますが、まず、これが基本パターンです。
しかし、ウェブの場合は、結論を最初に述べろと言われます。
それは、ウェブはスクロールしないと全体像が見えてこないためでもあります。
検索して記事に辿りついた人は、なんらかの答えを求めているのが普通です。そして、この記事は自分の求めている答えを提供できるかどうかを、まずは、タイトルで判断します。そして、そのページを開いて、最初に表示された部分の文章をざっと見て、最後まで読む価値があるかどうか、決めています。
だから、ウェブライティングでは、リードの文章が重要です。
この記事は、何についての記事で、どんなことを説明するのか、ある程度の結論も含め、リードで全体像がわかることが大切。
リードの後ろに目次がつけられるのもそのためです。
だから、ウェブライティングは『起結承転結』のような形になることが多いと思います。
まず、問題的と簡潔な結論がきます。
それから、なぜ、その結論になるのかの説明です。
その次に、もしあれば、具体的な事例や、例外の話をします。
そして、最後に、もう一回、結論を述べる。
基本はそんな風な流れになるかと思います。
それに比べて、紙媒体であれば、冊子を開いた瞬間に、ざっと見出しだけに目を通して全体の流れを確認できます。
スクロールしなければ、全体が見えないウェブとはそこが違うのです。
集客の責任の有無の違いが、ライティングを決定的に変える
とまあ、紙媒体とウェブでの記事を書くときの注意すべきポイントの違いについて述べましたが、このような違いがでてくる理由は、集客の責任があるかないか、ただ、その1点につきます。
紙媒体の場合は、掲載誌の購入をしてもらうことが重要で、その責任は、主に、編集者や出版社にあります。買いたい、読みたいと思ってもらえる、企画を組めるかどうか、そこが最も重要で、ライターはその企画に沿った原稿を書けばいいわけです。
ところが、ウェブの記事というのは、検索してもらってなんぼです。検索してもらえる、見つけてもらえる記事を書く責任がライターにかかってきます。
この集客責任の有無が両者のもっとも大きな違いであり、それによって、書き手の書き方も大きく変わってくるのです。
さいごに
そんな当たり前のことすら知らなかった私は、ウェブライターを始めた当初、かな〜りとまどいました。
最近、やっとキーワードにそって書くということに慣れてきたところです。とはいえ、それは、お仕事のライティング案件に限ってで、自分のブログといえば、あんまりSEO対策はされていません。(って、言う前にやれよって感じ?)
でも、私だって、せっかく書いた記事、読んでもらいたいですからね〜。
もうちょっとキーワードに沿った記事も今後書いていきたいな〜と思っているところです。