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ネパールの教育システムの現状と課題

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ネパールのポカラ在住、時々日本やタイ、その他いろんな国に出没する、エディター兼ライター兼コーディネイターのみやちか(Chikako Miyamoto)です。今まで培った編集力を駆使して、50歳からのトキメキのある人生を発信し続けるお姉さん。

 

ナマステ〜、ネパール在住、フリーランスライターのみやちかです。

 

日本の画一的な教育に疑問を持ち、海外で子供に教育を受けさせたいと考えている方もいるようですが、もし、のびのびと子供を育てたいと思っているなら、ネパールの学校は全くお勧めできません。

 

私立は暗記詰め込み教育で、宿題も多いし、公立はそもそも先生が来なかったりします。

 

今日は、ちょっとお固い話になっちゃいますが、そんなネパールの教育システムの現状や問題点、そして今後の課題についてお話ししたいと思います。

 

 

 

ネパールでの教育システムは10年制から12年制へ移行中

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ネパールでは、主に公立と私立という2種類の学校があります。

 

基本的にどちらの学校も、1年生から10年生までの10年制。低学年から落第のシステムがあり、テストの点が規定の点数を満たさないものは進級できません。

 

落第制度があることと、就学年齢が日本のようにきっちり誕生日で区分けしてないために、同学年でも2〜3歳の年齢差があることも珍しくありません。

 

また、10年生の終わりには、全国統一の学力テストであるSLC(SCHOOL LEAVING CERTIFICATE)があり、これに合格しないと11年生には進めないことになっています。

 

SLCは公立の学生も私立の学生も同じ試験を受けます。全国統一試験ですので、どこの学校に行っていたかよりも、このテストの成績が重要になってきます。

 

SLCを合格すると、キャンパスと呼ばれる11&12年生のための学校に行き、その後に大学という流れになっています。

 

ただし、現在、海外の教育システムに合わせるべく、1年生から12年生までの、12年制を基本とし、12年生でSLCを受けるように移行する方向で準備が進んでいます。 2年後には移行完了の予定となっています。

 

12年制への移行はもっと以前から言われていたことでしたが、いろいろあって先送りになって今に至っています。2年後もなるかどうか怪しいですが。

 

 

ネパールの公立と私立の違い、それぞれのメリット、デメリット

 

公立の学校について

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公立は政府が運営する学校でパブリックスクールと呼ばれます。1年生から10年生まであります。

 

学費はかかりません。教科書も政府から支給されますが、文房具は自費で揃える必要があります。

 

授業は基本的にネパール語の教科書を使って行われます。

 

科目は公立、私立ともにSLCの受験科目がベースになります。国語(ネパール語)、算数、社会、理科、英語が基本で、高学年になると選択科目として、保健、コンピュータ、数学Ⅱ、経済などがありますが、選択科目は学校によって違います。

 

国が運営する学校であるため、僻地の村でも公立学校は一応存在していますが、僻地になるほど、赴任する教師の確保が困難という問題を常に抱えています。そのため、僻地の村の雇用促進もかね、現地採用を試みるも、現地採用の教師は家の用事で度々欠席するという傾向が強くあるようです。

 

また、僻地になると就学人口が元々少ないのと、高学年への進級率が低いため、高学年のクラスを有する公立学校は低学年のクラスだけの学校よりも少なく、住むエリアによっては高学年になると、徒歩1時間以上通学にかかることもめずらしくありません。

 

学校の時間は、学年、エリアや季節によって多少違うものの基本は朝10時から午後4時くらいまで。朝は、朝ごはんを食べて登校。給食はなく、1時前後におやつタイムがあり、持参したものを食べることになります。

 

公立のメリット 

  • 学費が安い(授業料と教科書代は無料)。

 

公立のデメリット

  • 先生の欠席が多く、授業がないことも多い。
  • 授業のレベルが私立に比べて低い。
  • SLC(SCHOOL LEAVING CERTIFICATE)の合格率が低い
  • 英語力が低い

 

 

私立学校について

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ネパール製英語で、ボーディングスクールと呼ばれることが多い私立学校。ボーディングスクールとは、本来の意味は全寮制の学校を指しますが、ネパールでは、寮を持たない私立学校もこう呼ばれます。

 

一年生になる前の幼稚園部を併設していることがほとんどで、プレイグループ、ナーサリー、LKG(LOWER KINDER GARTEN 日本でいえば年中さん)、UKG(UPPER KINDER GARTEN 日本でいえば年長さん)で4年間あるところが多いようです。

 

授業は、国語(ネパール語)の授業以外は、英語で書かれた教科書を使います。

 

日本においては、義務教育の教科書は、政府発行のものや、政府の検定を受けたもののみが使われますが、ネパールにはそのような検定システムや学年ごとの学習指導要綱が設けられてないようです。

 

各私立はそれぞれの教科担当者が指定した教科書を使用します。

 

科目は、 国語(ネパール語)、算数、社会、理科、英語、(低学年ではアート、一般常識)などが基本で、高学年になると選択科目として、保健、コンピュータ、数学Ⅱ、経済など。一部の高額な私立は、体育、音楽、美術もありますが、本当に、ほんの一部にすぎません。

 

授業時間は、公立と同様に朝10時から午後4時くらいまで。

 

校区が決められているわけではないので、徒歩圏外以外の子供も通います。その場合、親がバイクで送迎するか、スクールバスの通学となります(スクールバス代は別徴収されます)。

 

給食がある学校も多くありますが、こちらも別途請求されます。給食といっても、ランチという感じではなく、軽食です。

 

 

私立のメリット

  • SLC(SCHOOL LEAVING CERTIFICATE)の合格率が高い
  • 公立よりもレベルの高い授業が受けられる
  • 英語の大学進学に有利

 

私立のデメリット

  • 学費がかかる(値段はぴんきりで、月謝が1,000ルピー程度の学校もあれば10,000ルピーの学校もある)
  • ビジネスとしての学校経営であるため、儲からない村などには設立されない
  • ビジネスとしての学校経営であるため、試験の点数を稼ぐことに重点が置かれすぎる

 

 

第3の選択肢、インターナショナルスクールあることはあるけれど…

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公立、私立の学校は、教科書は違うといえ、一応、SLCを意識したカリキュラムになっていますが、それとはまったく違った、母国のカリキュラムをベースにしたインターナショナルスクールもカトマンズには何校かあります。

 

ブリティッシュスクールや、アメリカンスクールであるリンカーンスクールなどです。

 

ここではネパールの暗記詰め込み教育は存在しません。なので、ネパールの学校に通っていた子供を、突然、こういう世界に放り込むと戸惑うこともあるかもしれません。

 

あなたはどう思う? あなたの意見は? あなたならどうする?

 

先生の意見が全てだったネパールの学校とはまるっきり違います。

 

でも、その分、自分で考える力もつきますし、将来海外の大学に行くことを考えると、いいに決まっています。

 

が、問題は学費の高さです。

 

ちなみに2016-17年のブリティッシュスクールの中学生の場合、申請と入学費が3650ポンド、学費が年間で8400ポンド、後で返金されるデポジットが2200ポンドで、合計なんと14200ポンドかかります。

 

この値段だと、ちょっと敷居が高すぎますね…。

 

これからのネパールの学校の課題

 

雨後の筍状態の私立を選別する時期に来ている

 

先生が来ないというような何かと問題の多い公立学校、そこで登場したのが私立学校であり、試験の得点アップに重点を置く方針が、親の志向ともマッチしたのか、ビジネスとして成功する学校が増え、私立の学校はネパール中に広がりました。

 

ただ、ある程度のお金を出せば学校を開けてしまう現状もあって、ネパールの私立学校が現在、雨後の筍のような状態にあることも事実です。

 

しかし、昨今教育省からのお達しによると近い将来、全ての学校は、自校の校舎を持たないとならないようにルールが改正されるようです。土地や校舎を借りてやっているような小さな学校は閉校に追い込まれることになるかもしれません。

 

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試験対策だけのカリキュラムの見直し

 

日本で言う運動会的なスポーツデイの開催、学校対抗のバレーボール大会、サッカー大会の開催、校内のエッセイコンテスト、ペイントコンテストなど、試験勉強以外のプログラムの導入も、昨今の私立学校では積極的です。

 

今まであまり重要視されなかった情操教育についての重要性を訴える人も増えてきているように思います。

 

また、暗記だけでなく、生徒の意見を出させたり、自分たちで調べて発表させるなど、教科書の内容にプラスαのある教育が、これからは求められるのではないかと思います。

 

 

先生の確保と質の向上

 

ネパールで学校を経営する上で、一番頭の痛い問題は、先生の確保です。若い人は海外留学、海外就労を目指す傾向にあるネパールにおいて、若い優秀な人材の確保はかなりの困難です。

 

そのため、毎年、先生が何人か入れ替わるのは、たいていの学校で珍しいことではなく、中でも高学年の理数系の教師の確保はかなり難しい状況です。

 

先生を確保するだけでも大変なのに、その質の向上となるとさらに難しくなっています。

 

たくさんのNGOが村落部に学校を建設するなどの、サポートをしています。建物ももちろん必要ですが、教える教師がいないことには、学校運営は成り立ちません。

 

昔と違って、学校を卒業すれば、教員になれる時代は終わり、教員課程の取得が必要になるなど、ネパールの教育現場も変わりつつあります。

 

教師の育成はこれからの大きな課題の一つです。

 

 

今日は、公立、私立とネパール全体の教育システムについて紹介させていただきました。

 

ネパールの私立の教育の実情について詳しくは、娘の就学体験も交えながら、 教育熱の高まるネパール、でも、その実情は暗記教育? で紹介していますので、そちらも参考にしてください。

 

 

 

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