ネパールの村のアマ(お母さん)のダルバートは、なぜおいしい?
ナマステ~。ネパール在住21年目突入のネパール人旦那を持つライターのみやちかです。
うちのツレアイは、今はカトマンズに住んでおりますが、実は、村出身。そして、村大好きなうちのツレアイは、お祭りや親族のお祝い事など、ことあるたびに里帰り。
アマ(ネパール語でお母さんの意味)のダルバートを時々食べないと元気がでないようです。いわゆるお袋の味というやつでしょうか?
でも、確かに村のアマのダルバートは、おいしいんです。私には、辛すぎるけど、それでもおいしいと思います。
高級食材を使っているわけでもなく、香辛料をたくさん使っているわけでもない。品数だって少ない。見た目には決して豪華とは言えない村のダルバート。
でも、そこには、単にオフクロの味を超えた何かがあります。
それは一体何なのか?
今日は、アマのダルバートのうまさの秘密に迫ります!
ちなみにダルバートは、ネパール料理の代表とも言える、ネパール人が日頃毎日食べている料理のこと。ダルバートとは何かについては、下記の記事をお読みください。
この記事のもくじ
アマが住むのは、カトマンズから丸一日かかるグルミ郡
うちのツレアイの村は、カトマンズからはバスで10時間以上、バスを降りてから徒歩2時間以上かかるような村です。まずは、カトマンズからタンセンへ。そこからバスでさらに75キロ。
日本ではほんの75キロかもしれませんが、くねくねアップダウンの山道を、集落ごとに人を乗り降りさせながら移動する、ネパールのローカル老いぼれバスだと、5時間はかかる道のりです。
さらに、バスを降り、いくつかの村を経由しながら、歩くこと1時間半。しかし、それは健脚ネパール人の場合。ひ弱な日本人嫁には2時間以上かかる道のりでありました。
目指すはグルミ郡。マガール族の村です。
今でこそ、電線が通っていますが、初めて訪れた19年前は電気もなく、夜はオイルランプという典型的な農村でした。
当時は、ガスコンロを使っているような家はなく、薪で煮炊きするのが一般的(今では、ガスボンベも手に入りますが、今でも薪での煮炊きがメインです)。
最寄りの日用雑貨屋までは徒歩20分。いわゆる薬局や布屋、大きな食料品店があるような商店街までは徒歩2時間というような田舎です。肉屋などあるわけがなく、私たちがはるばる訪れた時は、鶏を一匹締めてくれたというエピソード付き。
決して豊かな生活ではない村の家ですが、でも、村のダルバートは都会で食べるダルバートとは全然違っています。
村の毎日のダルバートは、意外に質素である
日本のネパール料理屋や、カトマンズのダルバート屋のダルバートは、ご飯に、ダルと呼ばれる豆のスープ、タルカリ(野菜のカレー)、サーグ(青菜の炒め物)、アチャール(付け合わせ)が2〜3種類、マス(肉のカレー)、パパド(おつまみ風スナック的なもの)などなど、一つのお皿に、いろんなものが盛り付けられています。
この写真みたいな感じです。
でも、村の普段のダルバートは、これに比べたら随分とシンプルです。シンプルというよりか、質素といった方が正しいかもしれません。
うちのアマの普段のダルバートは、
ご飯、タルカリ(野菜のカレー煮)、即席アチャール、
というのが基本。
ダルバートなのにダル(豆のスープ)はほとんど出されません。そのかわり、タルカリは少し水分が多めです。
ダルが出る日は、ご飯とダルと、アチャールといった感じになります。
お肉の日は、キャッチアイの写真みたいにお肉のカレーとご飯だけってことも結構あります。(お肉はお客様がいるときや、お祭りでもない限り滅多に出ませんが)
でも、お店では必ずもれなくついてくるダルが、村ではほとんど出ないのは何故なんでしょうね?
- 食べることに、ものズゴイ情熱を注ぐネワール族じゃなくて、マガール族だからってのもあるかもしれません。
- 多分、アマを始め、みんなあんまりダルが好きじゃないのかもしれません。
- わざわざダルを食べなくてもフレッシュな野菜がたくさんあるからかもしれません。
- お米や野菜がおいしくて、ご飯をダルで流し込む必要がないからかもしれません。
- そして、何より、一番の理由と考えられるのが、薪のかまどが一つしかなく、時間のかかるダルを毎日作るのが大変であるということ。
本当にシンプルな村のダルバート、でも、大切なのは品数じゃないってことです。
最低限の香辛料と大量の唐辛子だけのシンプルな味付け
うちのツレアイの大好物の、オフクロの味、村のアマのダルバートですが、アマのダルバートはとにかく辛いです。
何しろ、お義母さんときたら、唐辛子をぐわしっと鷲掴みでつかんでいれます。5~6人用のタルカリを作るのに、少なく見積もっても、10個以上の唐辛子は入ってます。
それも、さくらんぼみたいに丸い唐辛子。これ、普通の細長い唐辛子より辛いって言われているものなんです。そのすりおろした唐辛子に直に触ろうものなら、指がしばらくピリピリと痛むほどです。
そして、アマが毎回、タルカリに入れるマサラ(香辛料)はこちら!
あとは、玉ねぎとトマトとコリアンダー(生の葉)が薬味的に入ります。
特別なものは入れてないどころか、最低限も最低限。
それなのに、何故なんでしょうね。
高級レストランの気取ったダルバートより、アマのダルバートはずっとおいしいと、辛いのが苦手な私でさえ、そう思うんです。
アマのダルバートがおいしい理由
品数も少なく、使う香辛料も最低限なのに、村のアマのダルバートは何故、おいしいのでしょうか?
その理由を私なりに分析してみました。
1.野菜がフレッシュ
村では、八百屋で野菜を買うということはまずありません。自分の畑でできた旬の野菜を使います。しかも、調理する直前に収穫したものです。
それに、自分で食べる野菜は、大きさがバラバラでも不恰好でも気になりませんから、高く売るために必要な農薬など使っていません。ヘルシーでフレッシュな旬の野菜。おいしくないわけがないんです。
2.湧き水を使っている
村には水道水などきていません。近くの湧き水を汲みに行くなり、遠くの湧き水をパイプをつないで引いてくるかどちらかです。
カトマンズの水道水に比べて、格段に安全で、格段においしい水です。やっぱり調理において使う水がおいしいことって大切だと思います。
3.村で絞った100%ナチュラルオイル
水もたいせつですが、もう一つ、タルカリの味を左右するものがあります。オイルです。
村のオイルは、自分たちの畑で採れたからし菜の種を水車小屋で絞った100%ナチュラルなもの。ちょっとツンとする、からし菜オイル独特の匂いと味わいがタルカルにぴったり。
お店で売られているパッキングされたオイルとは格段に違います。
4.薪のかまど
最後に、もしかしたらこれが一番のポイントなのかもしれません。ガスコンロじゃなくて薪のかまどで調理していること。
かまどで炊くとタルカリもおいしいのですが、ご飯が全然違うのですよ~。かまどで炊いたご飯のおこげ具合もなんとも言えません。
日本では、はじめチョロチョロなかパッパ、赤子泣くとも蓋とるな~と言われます。はじめは弱火で、中頃には火を強め、蓋は途中で決してとってはいけないということですよね。
でも、村のご飯炊きはちょっと違います。
なかなか沸騰しないのですが、そこは、我慢。徐々に沸騰してきます。
2 鍋の口あたりまで泡立って水分が少し減ってきたなというタイミングで、しゃもじのようなもので、鍋の底からぐわっとぐわっとお米をかき混ぜます。少し水が外にこぼれても気にしません。というか、ここで、余分な水分はふきこぼす感じです。
このかき混ぜるタイミングを見極めるがすご~く、難しい。適度に水分が残っている時点で行う必要ありです。
3 かき混ぜて少し置いたら、やっと蓋の出番です。木の蓋だったり、時には葉っぱのお皿を蓋に使ったり。蓋をしたら、薪をかまどから少し引きます。余熱で蒸らす感じです。
4 しばらく蒸らしたら、適当なところで火からおろして終了。これがなかなかタイミングを掴むのが難しいんですが。
ネパールのあのパサパサご飯は、こうやって生まれるわけです。
たまにはアマのダルバートを食べに行こう
というわけで、今日は、村のアマのダルバートがなぜおいしいかというお話でした。
アマのダルバートが一番おいしい秘密を紹介しましたけど、でも、一番は『アマが作っているから』という、その一言につきるのかもしれません。
書きながら、しばらくお義母さんに会ってないなあと、ちょっと反省してます。
息子の顔と違って私の顔を見たいわけじゃないとは思いますが、お義母さんのことちゃんと敬意を持って想ってますよっていう意思表示はやっぱり、必要だ思うんですよね。
そして、アマのダルバートが一番おいしいよってちゃんと言葉で伝えること。
親孝行って、特別なことじゃなく、日頃からそういうことを心がけることじゃないかなと思うんです。
だから、たまには、アマのダルバート食べに行かなくてはね。