ネパールの常識は日本の非常識 食文化編【現地ライターが語る】
ナマステ~、ネパールのポカラ在住ライターみやちかです。
早いもので日本を出てからもうすぐ21年を迎えてしまいます。
最近は、日本人の観光客に日本語上手だねと、言われることがあったり、ネパール人に一目で外国人とは見抜かれなかったり(ネパール語をしゃべった途端に外国人だとバレますが)する私ではありますが、やはり、どこまでいっても、日本人。
ネパールの生活や文化や風習に、「なんでなん?」となることは今でもあります。
そんな日本人には「???」なネパールの常識、今回は、食文化に関わることについて書いてみました。
ただし、多民族国家、多宗教のネパールにおいて、この記事が全てのネパール人に当てはまるわけではありません。うちのツレアイは、ヒンズー教徒ですから、ここではヒンズー教徒の食文化について語ります。
が、同じヒンズー教徒でも食文化は多種多様なのがネパール。
うちはそうじゃないよ!という家庭もあるかもしれませんね。
保守的な家庭か革新的な家庭かによってもかなり違うと思います。
なので、ここで語るのは、私の周りのヒンズー教徒のネパール人における食文化ということになります。
ネパールの食習慣(どんなものを、どんな頻度で、どのように=ダルバートを、毎日2食、手で食べる)については、別に書いていますので参考にしてください。
この記事のもくじ
大前提にあるのはジュート(=けがれ)の概念
ネパールの文化において特徴的なもの、それは「けがれの概念」でしょうか?
「けがれ」はネパール語では「ジュート」と言います。そして、その反対語は「チョコ」、これは日本語でいうと「けがれていない、清らかな、神聖な」という感じでしょうか?
このけがれの概念は、ネパールにおいて神聖とされる台所では大きな影響力を持ちます。
1. ネパールの食事は一人一皿 人が手をつけたものはジュートとなる
日本料理や中華では、大皿からおかずをシェアすることもそう珍しくないこと。家族間では、取りばしなしで、個々の箸で、直接お鍋をつついたりもします。
が、これ、ネパールでは大大大NGです。
人が手をつけた食べ物は、ネパールではジュート、けがれているとされます。
ですから、自分の食べかけや食べ残しを人にあげるなんてもってのほか。
ネパールでは、一人一皿が基本で、お代わりが必要な場合は、給仕する人がついでまわってくれます。
飲み物も、口をつけたものを回し飲みするなんてご法度です。
飲み物を回し飲みするときは、ボトルやグラスに口をつけず、上から口の中に注ぎ込むようにして飲みます。
インド飲みなんていう言葉もあるようですが、一口分ならともかくペットボトル半分くらいを、喉をカッカッと鳴らしながら一気に飲むやり方は、とても私には真似できそうもありません。
2. 生理中の女性はジュート、台所立ち入り禁止
ちょっと前の日本でも、生理中の女性は、鳥居をくぐってはいけないなんて言われていたようですが、ネパールでは、お寺に入れないのはもちろんのこと、台所に入ることも禁止です。
そうなんです。
ヒンズー教において、生理中の女性はジュート、けがれているいるってことになります。
じゃ、お母さんが生理中だったら、ご飯は誰が作るのか?ってことになりますよね。
村では、大家族制でお母さん、娘さん、お嫁さんなどなど女性は一人ではありません。誰かしら生理じゃない人が作るから大丈夫なんです。
困るのは、核家族化した都市生活者。
うちの大家さんなんかは、ご主人と奥さん、息子二人の4人家族。奥さんが生理中は高校生の息子かご主人がご飯を作るそうです。
が、そんなこと気にしてられないっておうちも結構あります。
都会で生活していて、お父さんは出稼ぎ、お母さんと小さい子供だけっていう家庭では、生理だからご飯食べないというわけにもいかないじゃないですか。
そういう家庭では、生理になったらとりあえず水浴びして、それで『みそぎ終了!』って勝手なその家のルールを作って、なんとかごまかしていたりします。
まあ、今時の若い世代では、もうそういうの気にしなくてもいいんじゃないという風潮もあり。
パンティとナプキンの普及が影響しているのかどうか、台所事情も徐々に変化していくのかもしれませんね。
3. 身分階層が低い人と一緒にテーブルは囲まない
ネパールの社会には古くから、ジャートと呼ばれる身分階層制度がありました。
現在、法律上では、ジャートに上下はなく、ネパール人は皆平等とうたわれていますが、古くから続いてきた社会風習はそうそうなくなるものではありません。
特に、田舎や高齢者や身分階層が上の人ほど保守的。
うちの村では、低いジャートの人は、絶対にうちの実家の中には入ってきません。
水を飲むのも庭先で、軽食を食べるのも庭先、使った食器は自分で洗い、鶏小屋の屋根の上に乾かしていきます。
また、これはポカラでのことですが、ある最高階層の家の結婚式では、お呼ばれのご馳走を食べるテントが最高階層用とそれ以外に分かれていたこともありました。
ただ都会では、ジャートを気にしない人もじょじょに増えてきました。
そうでないと外食産業だって、成り立ちませんしね。
というか、ネパールやインドにおいて、東南アジアのような外食産業の発達が見られなかった原因は、この身分階層制度とジュートにあるのじゃないかなと思ったりもします。
一緒に食卓につくくらいどうってことないじゃないか、日本人の私はそう思います。
しかし、風習、習慣とは恐ろしいもので、理屈ではどうしようもない生理的な不快感を感じてしまう人々もうるようなのです。
だから、複数のネパール人を同時に食事に誘う時には要注意。普段食卓を一緒にしている仲間内ならともなく、不用意に知らないネパール人同士を同席させると、思いがけず誰かに気まずい思いをさせてしまうかもしれません。
4. 空腹のまま儀式を済ませるのが常識
宗教的な儀式において、けがれはもっとも嫌われるもの。
だから、ネパールでは、宗教儀式の前には、禊(みそぎ)が必要です。
儀式のある日は、朝起きたら、水浴びをして、心身を清めます。
村などでは、わざわざ湧き水のある場所まで禊をしにいきますが、都会ではそういうわけにはいかないので、家のシャワーで代用します。
そうやって身を清めたら、何も食べずにそのまま儀式に挑みます。
だから、長い儀式の時は(3~4時間かかる儀式もあります)、お腹ペコペコになっちゃうんですけどね。
それでも、食事は儀式が終わってから。
そういうところは我慢強いというかなんというか、感心するばかりです。
5. 床も、テーブルも、食器も同じ布でふくの?
ここまで、徹底してけがれにこだわるネパールなのに、布の汚れには関心がないようです(笑)。
私たち日本人の感覚では、台拭きと食器拭きは別の布を使うという人が圧倒的に多いと思います。
床を拭くものとテーブルを拭くものは、雑巾、テーブル用布巾と名前さえ違うことからまず100%別物でしょう。
が、日本人のこの常識がネパールでは通用しないのです。
テーブル拭く台拭きも、食器拭きも一緒。
それだけでも、日本人的にはNGですが、その上さらに、床も同じ布で拭かれたら、さようならです。
日本では、その布は、雑巾へと格下げになること、間違いなし。
それが、洗えば一緒でしょ的な感じで使い回されることに、激しく抵抗を感じてしまうわたし。
あ~、わたしは日本人なんだと感じる瞬間です。
強引なまとめ
というわけで、今日は、日本とまるっきり違うネパールの常識、『食文化にまつわるけがれの概念』についてご紹介しました。
当然ならが、日本で当たり前なこともここでは当たり前でなかったり、ネパールでは当たり前のことが日本ではあり得なかったりします。
暮らしてみないとわからないことはたくさんです。
そして、暮らしてみても理解できないこと、理解しがたいこともあるものです。
でも、それが外国で暮らす面白さかもしれませんね。
というわけで、また機会があったら、学校編や、結婚式編なども書いてみたいと思います。
それでは、また。ナマステ~!
ネパールの常識は日本の非常識 水回り&電気編についてはこちらの記事をどうぞ!