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大学卒業しても職がない! 若者がこぞって海外を目指すネパールの就職事情

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ネパールのポカラ在住、時々日本やタイ、その他いろんな国に出没する、エディター兼ライター兼コーディネイターのみやちか(Chikako Miyamoto)です。今まで培った編集力を駆使して、50歳からのトキメキのある人生を発信し続けるお姉さん。

 

こんにちは、ネパール在住20年、一児の母でもあるフリーランスライターのみやちかです。

 

さて、近頃のネパールの若者は、もれなくといっていいほど、目が外に向いています。

 

ネパールの外=つまり海外です。

 

外国人が祖国が失ったものの面影(しょせん幻想だと思うんですけどね)を求めてネパールにやってくるのとは、全く逆で、ネパールの若者は経済的な豊かさを求め海外に思いを馳せます。

 

学力があって、ある程度の財力があれば(あるいは借金してでもお金をかき集めるだけの能力があれば)、先進国の大学留学、その後そのまま現地での就職を夢見て。

 

学力に自信がなく、経済力も乏しければ、中近東やアジアへの肉体労働の出稼ぎにかすかな望みをつないで。

 

バブリーな土地の値段の上昇に加え、絶望的な就職難とインフレにさらされたネパール国内に、希望を持てないと語る若者たちが、どんどんと海外へ出ていきます。

 

今日は、そんなネパール人の就職事情をお話ししたいと思います。

 

 

絶望的なほど就職先が不足しているネパールの経済状況

 

20年前に比べ、家も増え、車も増え、ショッピングセンターも増え、経済的に随分と豊かになったように見えるネパール。

 

確かに、一人が使えるお金の総額は増えたかもしれせん。

 

でも、それは主に、バブルで土地を転がした結果と、海外からの送金の急増によるもの。

 

日本でも大卒の就職浪人が話題になっていますが、ネパールのそれは、日本の比ではありません。大学を卒業しても、就職できない人の方が圧倒的に多いネパールの国内就職事情は、20年前よりは少しはマシになったものの、現在でもかなり深刻です。

 

でも、それも仕方ないことかもしれません。

 

就職しようにも就職する企業自体が少ないのですから。

 

ネパール人の就職先として、ある程度の人数の採用が見込まれるのは、ネパールの官公庁、学校、軍隊(ネパールでは職業軍人です)、病院などでしょうか? あとは、銀行、観光関係、建設関係、外国公館などなど。

 

就職先が全くないわけではないのですが、公務員以外は定期採用があるとは限らず、いい職ほど、コネで埋まってしまうのが常です。

 

また、待遇のいい仕事の応募条件にはほとんどの場合、実務経験が問われます。社会経験のない新卒の若者はネパールではお荷物扱いですらあります。

 

ここ20年ばかりの間に急速に教育熱が高まり高学歴の若者が増えたけれども、その数だけ就職先が増えるわけがありません。

 

学歴はあるが職がない、学歴があるばかりに労働者レベルの職にはつきたくない、学歴があるために結婚できない(女性の場合ですが)という若者が増えてしまったという印象が私にはあります。

 

 

家のお値段1500万ルピー、大統領の月給15万ルピーという現実

 

 

国内には、就職先がない。だから、海外に就職先を求める。

 

これは当然の流れかもしれません。

 

日本でも、職を求め多くの人が地方から上京してくるのと同じです。ただ、それがネパールの場合は、出る先が国外なだけです。

 

ただ、もし、ネパール国内の社員募集枠が大幅に増えたとしても、多くの若者はやっぱり国外を目指すに違いありません。

 

その理由は、国内のインフラ経済と土地の高騰に比べ、ほとんど伸びない月収にあります。

 

止まらない土地の値段の上昇は、ネパール国内で会社員をしたのでは、一生会社員として働いても土地が買えないという状況を作り出しています。

 

もっとも土地の高騰が激しいカトマンズでは、中心部のリングロード内、車道に面した家は何千万円の価格がつけられています。

 

ネパールの暦で2073年(西暦2016~2017年)の公務員の月給を調べてみたら、約2~30,000ルピー、公務員の中でトップの大統領でさえ15万ルピーです(2017年8月現在 ¥1=1.08ルピー、で計算すると、約16万円)。

 

中心から少し離れたところでさえ一戸建て2階の家(車一台の駐車スペースがやっとこさ取れる程度の敷地)で1500万ルピー(同上の計算で1600万円)。場所によっては土地だけで何千万という家も珍しくありません。

 

(ちなみにアパートを借りるにしてもカトマンズ市内では、2LDKの場合、15,000ルピーならお安いほうです。家具付きだったりすれば、30,000ルピー以上してもおかしくありません。)

 

一生働いてもカトマンズで土地を購入できないような月給で、誰が仕事したいですか?

 

だから、カトマンズに就職先がたとえあったとしても、若者はやっぱり国外を目指すのでしょう。

 

 

高収入への近道は、海外留学、海外就職

 

そして、どうせ海外に出るなら、先進国で、高給を取りたい、と思うのが人間というものです。

 

そりゃ、まあ、当然です。

 

が、ネパールの大学を卒業して海外の先進国で就職できるほど、世の中は甘くありません。

 

仕事の経験のない、ネパールという小さな発展途上国の学生を、海外の企業が、ワーキングビザやワーキングパーミットという面倒な手続きをしてまで採用してくれることってそうそう考えられません。

 

先進国で就職するには、まずは、先進国の大学に進学し、卒業後、そのまま現地で採用されるというのが最も現実的な方法です。

 

だから、みんな無理しても、学費を親戚中から借金してでも、子供達を海外に送り出すんです。

 

日本の日本語学校に語学留学するネパール人たちの目標もほぼ同じです。

 

スタディビザでまずは、日本へ行く。学業優秀なら、奨学金で大学の道を目指す→卒業後、日本企業に採用される。

 

あるいはスタディビザが有効なうちに、様々な仕事をこなし、正式採用してもらう。

 

中には、ちゃんと就職でき、立派に働いている若者もいます。

 

でも、就職先が見つからず、借金が返せないまま、ビザが切れてしまう人や、そのまま地下に潜って違法就労する人がいるという現実もあります。

 

よほどの金持ちの子息でもない限り、スタディビザで海外留学し、アルバイトする必要がない学生などいません。

 

夜中のコンビニバイトをこなしながら、試験でも結果を出す、そういう厳しい状況の中で、みんなが夢見るのは、勝ち組に残った自分の将来の暮らしなのでしょうね。

 

 

せめて、最下層の生活レベルからの脱却を出稼ぎで図る

 

 

一方、カトマンズ空港の出発ロビーは、連日ワーキングビザで中東や東南アジアへ向かうネパール人男性であふれています。

 

彼らはの大半は、海外人材派遣会社を通じての出稼ぎです。

 

時には、五つ星ホテルのスタッフや、航空会社のスタッフの募集もありますが、そういう美味しい仕事は、人材派遣会社にコネのあるものや、賄賂が払えるものの手に渡ってしまいます。

 

村から出てきたばっかり、英語はほとんど喋れないというような村人のほとんどは、建設現場の肉体労働や、工場の工員、清掃員、夜中の仕事がほとんどです。

 

少し待遇がいいのが、ウエイターやドライバー、バリスタなど。シェフや特殊車両のドライバーならさらに重宝されます。

 

彼らは人材派遣会社に手数料を支払って、ワーキングビザを手に入れます。

 

派遣される国や、派遣先の待遇や、給料によって金額はまちまちですが、10万ルピー以上かかることもザラです。

 

その手数料を払えないものは、労働者レベルの出稼ぎに出るのも困難というのが現実です。

 

それでも、現金収入のほとんどない村人にとっては、村にそのままいるよりは、ずっと希望がある選択なのです。

 

 

それでも親の本音は、子どもの未来を優先してしまう

 

最近、うちのツレアイの妹の娘(18歳)が田舎から出てきて、カトマンズでオーストラリア留学の準備を始めました。2人いる義理の妹の娘4人中、一番勉強ができて、勤勉な子です。

 

ツレアイの学校で先生しながら大学に通っている、遠い親戚の女の子も同じくオーストラリア留学を目指しています。

 

私の周りは、最近やたらとオーストラリアづいています。

 

うちのツレアイの兄の姪っ子がオーストラリアに留学し、卒業後、シドニーで就職しているからです。向こうに1人、頼れる知り合いがいれば百万馬力のネパールのディープな親戚関係。

 

住むところをシェアすれば、お互いに節約になるし、先に現地に移住している者が入れば、就職先を探すのも楽です。

 

そうやって、できる子ほど、海外で行ってしまうネパール。

 

このままいくと、ネパール総過疎化するのではないかと心配になるくらいですが、どうなんでしょう?

 

それでも、才能ある若者の立場になってみれば、就職のあてのないネパール国内にいるよりも、自分の実力が活かせる海外で働きたいと願うのは、自然なことに思えます。

 

そして、自分の子どもにどうしてほしいかと問われれば、やはり、海外で自分の実力を発揮して、生き生きと働いてほしいし、経済的にも自立してほしいなあと、思っちゃうのが親としての本音ですかね。

 

というわけで、今日は、ちょっと真面目に語ってしまいました。ネパールの就職事情。コメントやお問い合わせで、ネパール人の仕事観や、ネパール国内での就職事情について聞かれることが何回かあったので、記事にまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

 

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ネパールのポカラ在住、時々日本やタイ、その他いろんな国に出没する、エディター兼ライター兼コーディネイターのみやちか(Chikako Miyamoto)です。今まで培った編集力を駆使して、50歳からのトキメキのある人生を発信し続けるお姉さん。

Comment

  1. アバター 坂本 より:

    これは現実ですね。
    職のない若者はあふれて毎日みたいにネパールバンダ
    いつシンガポール、マレシアのりリダが生まれるでしょうか?

  2. アバター ゆき より:

    初めまして。
    今ネパール人の彼と交際している者です。
    こんなに大変なんだという事を初めてしりました。
    彼が日本で仕事ばかりで寂しい思いをしておりますが、こういう事実を知れて彼の頑張りを応援しようと思えました。
    ありがとうございます。

    • アバター miyachika より:

      コメントありがとうございます。
      参考になったのであれば再話です。
      これからもよろしくお願いします。

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