旧紙幣廃止で混乱するデリーに、仕事で4日間滞在して感じたこと
ナマステ〜、デリーでの仕事を終え、ネパールに戻ってきたmiyachikaです。
11月8日、インドのモディ首相による、旧紙幣の1000ルピー札と500ルピー札廃止の突然の宣言はインド中にパニックを巻き起こしました。
代わりに2000ルピーと500ルピーの新紙幣が発行されましたが、交換、引き出し、両替全てにおいて、1日の制限が設けられました。
12月になれば、平常に戻るかと思いきや、現在も混乱状況は解消されず。
それでも、仕事は決行! これしきのことで負けては南アジアでは生きていけないのでありまする!
そんなわけで、本日は、旧貨幣廃止でまだまだ混乱状態のデリーで、仕事をしてきて感じたことをご紹介します。
突然のモディ首相の発表にデリーは大混乱
ことの始まりは、すでにニュースでご存知のように、11月8日のインドのモディ首相による、旧紙幣の1000ルピー札と500ルピー札の廃止宣言でした。それも宣言から4時間後に敢行されるのです。
脱税や偽札、テロリストへの資金流出を阻止する目的であるということですが、そりゃ、混乱するでしょう。
インドの紙幣は、最高金額が1000ルピー札で、その次が500ルピー札、流通する紙幣の総額の80%以上を占めるその2つが4時間後には使えなくなると言うんですから。
11月末から仕事でインドに行くことにしていた私も少額ではありますが、前回のインド旅行の残りの5000ルピー(約8000円)ほどを1000ルピー紙幣で持っていましたから、『ええ〜〜〜!』と思ってしまいました。
だから、インド在住で、タンス蓄財なんかあったら、ショックで寝込んじゃうかもしれません。
銀行の窓口で、金額の制限つきで、旧紙幣と新紙幣の交換を行っていましたが、それも11月24日には、打ち切りとなりました。残る手段は、銀行口座に預金することです。自分の銀行口座への旧紙幣の預け入れは年内いっぱい受け付けられるということです。
ただし、一人当たりの金額が制限されているということ。しかも、銀行も新紙幣のキャッシュが不足しているため、引き出しは1日あたり2000ルピーのみという制限つき。
銀行は連日、長蛇の列。しかし、銀行だって、そんなにたくさんの新紙幣を持ってないのか、並んでも自分の番がくる前に現金が終了してしまうこともあるようです。
銀行口座がない人だって多いインドです。この機会にできるだけ多くの人に銀行口座を作ってもらい、キャッシュレス社会への移行を図ろうという目論見もあるのでしょうか?
このような状態が経済に影響を及ばさないわけがありません。まだまだ現金決済のビジネスが一般的なインドです。クレジットカード払いが不可能な小売店も多いのです。
そのため、現金の不足から、買い物がしたくてもできない人が増え、11月9日移行、消費が激減しているようです。
仕入れで使うデリーのパハールガンジのハンディクラフトの小売店や問屋に聞いても、本来11月、12月は、かなり儲かる時期らしいのですが、キャッシュの不足が原因で売り上げは例年に比べてかなり少ないということでした。
街中の両替屋や銀行は当てにできない
銀行は、現地のインド人で、長蛇の列で、とてもツーリストが入り込めるような状況にありません。
また、パハールガンジには、いつもなら、多くの両替屋が営業しているのですが、現金がない店も多く、たとえあったとしても、両替レートは銀行発表レートよりもかなり低いものに設定されています。
空港で円のレートが0.59なのに、街中では0.40って、それ、普通ありえないでしょう。
それだって、キャッシュがあればまだマシで、多くの両替屋は『No Cash』の張り紙がしてあります。
稼働しているATMマシーンも少なく、あったとしても、1回の引き出しあたり2016年12月6日現在、引き出し制限は2000ルピー。1回の引き出しごとに手数料を結構取られるのに、上限が2000ルピーでは割りがあいません。
クレジットカードが使えるホテルに宿泊していればまだしも、キャッシュオンリーのゲストハウスなどに宿泊しているバックパッカーたちはどうするんでしょうね? 心なしか、ツーリストが少ないのはやっぱり気のせいではないのかもしれません。
デリーの前にコーチンに数日滞在していたのですが、コーチンでは、少なくともATMの前や銀行の前に列ができるような事態にはなっていませんでした。銀行の多さと、デリーに比べれば人口が少ないということもあるのでしょうね。
デリーでは、高級ホテルに宿泊し、全ての観光、移動がパッケージになっていて、クレジット決済で全て済ませられるようなツアー客なら問題ないのですが、現金決済メインのバックパッカーには、現在のところちょっと厳しい状況です。
空港では今のところ一人当たり5000ルピーまでの両替ができますので、とりあえず、空港で忘れずに両替をし、あとは、できるだけクレジットカードを利用するしかないようです。
仕入れにも大きな支障が出ていて、海外銀行送金で全ての決済を済ませるような大手の業者には問題なくても、今まで、現金決済してきたような自営業的な店の仕入れが困難な状況でした。
自営業的な中小の業者を多く顧客に持つデリーのパハールガンジの問屋にとっては、新紙幣が普通に普及するまでは、厳しい状況が続きそうです。
状況を逆手にとって、旧紙幣で儲けようとする輩
しかし、たくましいインド人のことです。どんな状況にあろうとも、その状況を逆手にとって、一儲けしてやろうという輩が出てくるものです。
すでに、交換期間が終わった旧紙幣である1000ルピー札と500ルピー札ですが、銀行預け入れは年内できます。ただし、個人が預金できる金額は制限されているので、それ以上は預け入れできません。リミットを超えた現金を持っているいる人には、大きな問題です。
そこで、旧紙幣をその価値の7割、6割で買い取るという闇ビジネスが登場です。
旧紙幣の10万ルピーが新紙幣の6万ルピーにしかならないのですから、めちゃくちゃ目減りしていますが、それでも、紙くずになるよりはマシなのです。
「結局、今、一番困っているのは、僕ら労働者階級だよ」と問屋のスタッフは言っていました。
クレジットカードも持たない、もしかしたら、銀行口座すら持たない彼ら。銀行口座がないと、旧紙幣を預け入れることもできません。
そして、ベットの底に大事にしまっていた500ルピー札は紙くずになりつつある、これ、生活に余裕のない人にとっては、本当に深刻な状況なのだと思います。
ただね、みんな、困っているわりには、暗くないんですよ。『困った、困った』『ビックプロブレム』とか言っているわりには、インディアンジョーク飛ばしたり、チャイ飲みながら新聞読んでいたり。
政府の一挙一動で振り回されるのは、きっと今に始まったことではないのでしょう。もちろん、困っているのは本当なのでしょうが、インド人の強さみたいなものも感じずにはいられませんでした。
もし、日本でこんなことが起こったら、どうなるでしょう。もっとパニックになっちゃう気がします。
さいごに
モディ首相は、『50日間だけ、耐えてほしい。そうすれば、みんなが望む、クリーンな社会が実現できる』 という意味合いのことを言っていました。
50日というとちょうど年末です。
2017年にはこの混乱も落ち着いているのでしょうか?
一外国人の私にできるのは、落ち着いていることを願うことぐらいなのですが。